共同養育の大切さ

2014年02月07日 07:42


「離婚後の共同養育:それぞれの家で行う養育についての研究の総説 
Shared parenting After Divorce
: A Review of Shared Residential Parenting Research」
リンダ・ニールセン 
Linda Nielsen、Journal of Divorce & Remarriage、
52:8, 586-609、18 Nov 2011

 著者は、北カロライナ州のWake Forest大学の教育学部教授です。
これは、共同養育についての実証的な論文の総説です。
この論文は、全文が無料で公開されています。

この論文では、共同養育は
「子どもが時間の35%以上をそれぞれの親と過ごすこと」
と定義されています。
親が離れて暮らしている場合は、35%過ごすのはなかなか困難です。
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(1)比較的最近まで、子どもの時間の3分の1以上を
それぞれの親と過ごすのは、
親が離婚した子どものわずか5~7%に過ぎなかった。
しかし最近ではウィスコンシン州、アリゾナ州、ワシントン州などで、
全体の30~50%を占めるようになっている。

同じように、オーストラリア、オランダ、デンマーク、
スウェーデンでは、共同養育の子どもは、
全体の18~20%を占めるようになっている。

(2)共同養育を行う親は、近年増加している。
それは、父親が以前よりも
子どもに関心を持つようになったからではなく、
また、離婚後の両親の関係が以前よりも改善されたからではない。
親自身と家庭裁判所関係者が、共同養育の利点を理解するように
なったからである。

(3)(離婚後の子どもの養育について)調査を受けた人々の多くは、
子どもはそれぞれの親と平等の時間を過ごすべきだと答えている。
2004年のマサチューセッツ州の53万人の投票では、
85%の人が離婚後に子どもはそれぞれの親と
平等に過ごすべきだと答えた。

(4)共同養育と単独養育を比較した21編の論文を検討したところ、
21編の論文のうち、
「共同養育が単独養育よりも良い結果をもたらす」と
結論した論文は18編、「一長一短」と結論した論文が2編、
「差が無い」と結論した論文が1編であった。

(5)父親が子どもの日常生活の広い範囲に積極的に関与して、
放任ではなく、専制でもなく、
親としての威厳を保って子どもに多くを教える場合に、
親が離婚した子どもは、最も多くの利益を受ける。
子どもは日々の習慣や儀式を、父親と一緒に行う必要がある。
例えば、一緒に料理をする、使い走りをする、
学校の準備をする、宿題をする、買い物をする、
雑用をする、一緒にぼんやり過ごすなどである。

(6)共同養育の子どもは、
週に1回以上父親に面会する子どもと比較して、
経済的に恵まれている。
また、共同養育の子どもは、両方の親と、
精神的に近い関係にある。
最も不幸な子どもは、母親と暮らしてまれに父親と会う子どもである。

(7)共同養育を行う親は、そうでない親と比較して、
収入がより多く、より長い教育を受けているが、
元夫婦の人間関係の質や、争いのレベルは、
離婚したその他のカップルと比較して、特に良いというわけではない。

(8)元夫婦の間に暴力を伴わない争いがあったとしても、
そのことを、離婚後に子どもがそれぞれの親と過ごす時間を
減らす理由として使ってはならない。
そしてこのことは、専門家の間の一般的な合意事項になっている。
(堀尾英範)

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┣☆┫2 「父親の愛情十分でも会わせない」楠本新裁判官編
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楠本新裁判官(長崎家裁所長)編

Oさんは子どもを連れ去られた後、
面会交流の調停を申し立て、審判になった。
楠本が2012年12月26日に出した審判では地裁では,

「(Oさんは)本件子らに対して父親として
十分な愛情を持っているけれども,
前記健康状態のもとで相手方にした言動によって,
本件子らが多大の苦痛と不安を感じ,
現在もその影響が残っていると認められる」 ので,
「子らが申立人の状態について理解する力をつけるまでは,
面会交流を控えることが適切」かつ,
「本件記録中にある申立人作成の本件子ら当ての文書を見ると,
その記載態様が,本件子らの年齢を考えれば,
精密にすぎ理に走っていて,
これを受取った子らを息苦しくさせるおそれがあると思われる。
そうであれば,間接的な面会交流も,
いまだ時期尚早と言うより外はない。」

健康状態はOさんのうつ病のことだが,
何年も前に発症していて,子供たちと一緒に病院へ行って,
家族ぐるみで病状回復を目指しながら,Oさんは仕事をしていた。
だから、子供たちは幼稚園の時から
父親の状態は理解していたはず……というOさんの主張は,
全く採用されなかった。

原敏雄,小田幸生,佐々木信俊(福岡高裁第4民事部)編

抗告の際には,試験的な面会交流すら実施しないまま,
未成年者らに対する面会交流の申立を却下する
原審判は不当とOさんは主張した。
しかし2013年4月26日福岡高裁の決定は、
その良し悪しには触れず,
「未成年らの成長及び抗告人との面会交流に対する
意向の変化等をみて,いずれ面会交流が図られることが望ましい。」
と判断を付け加えただけで,原審どおりとして棄却された。